河合雅司著「未来の年表 業界大変化」2040年にはあらゆるサービスが立ち行かなくなる。特に地方は滅亡へ向かっていくだろう。

独身の一番の課題といえば、「老後、誰に頼ればいいのか」に尽きます。

実際に「老後寂しいから」という理由で子どもを作る人はたくさんいますし、独身には「老後はどうするの?」という言葉が投げかけられます。

私の周りはみな結婚して子どもを産むという安牌な人生を送っていますが、私の同年代の氷河期世代が高齢者になるころには、日本は地獄絵図となっているでしょう。

非正規子無しが多いであろう氷河期世代は、間違いなく下の世代に迷惑をかけることになります。正直今から人生を巻き返すことは難しいですが、今後日本がどうなっていくのか、最悪の状況は覚悟しておかないとなあとは思っています。

人口減少や少子高齢化により何が起こり、そして社会はどう対応していくべきなのかを考えた書籍をご紹介します。

河合雅司著「未来の年表 業界大変化」とは

2017年にベストセラーになった「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」の続編的な著書。

未来の人口は出生人数でほぼ確実に予測することができます。そのデータによって、どの業界でどれくらいの人数が不足するのか、社会にどのような不利益が生じるのかを予測し、対策を示したのが本書です。

河合雅司とは
名古屋市生まれ、中央大学卒業。作家、ジャーナリスト。 人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授など。 著書は「未来の年表」「未来の年表2」「未来の地図帳」「未来のドリル」など。

人口減少によって日本に起こる恐ろしいリアル

ものづくりがヤバい

日本は「ものづくり」で発展してきた国です。しかしこれから日本の製造業には人口減少による危機が訪れるのです。

まず若い就業者が100万人以上減少し、人手不足となります。若者にとって工場というものが身近ではなくなり、仕事の内容や、工場に勤めた場合の自分の将来像がつかみにくくなっているのです。

その結果「きついのに給料が安い」といった悪いイメージばかりが先行し、それは他のブルーカラーの仕事でも同様で、自動車整備学校では入学者が約半減しています。

現在若者の車離れが進み、20代の運転免許保有者も減っています。もはや若者にとって車は憧れの存在ではなく、整備会社への就職もイメージしづらいのです。

大学進学率が上がったことにより日本を支えてきた産業に就く若者が減少し、第一種電気工事士も2030年には2万6000人不足する見込みです。

こうなってしまえば車のメンテナンスや製造が滞り、夏にエアコンが故障してもいつ取り替えに来てくれるのかも分からなくなります。

また建設業も作ったら終わりというわけではありません。老朽化すれば直すことが必要です。しかし建設業は現在労働時間が長く、賃金も低い不人気職となっており、ますます人手不足となっています。しかも建設業就業者の高齢化が進んでいるのです。

2021年は55歳以上が35.5%を占め、全体の3分の1となっている。一方で、29歳以下は12.0%にとどまっているのである。全体の25.7%を占める60歳以上の技能労働者の大半が今後10年で引退すると、熟練した技術も消えていく。

河合雅司著「未来の年表 業界大変化」

若者が製造業に就かないということは、職人や技術者たちの培ってきた技術が継承されないということです。技術は一朝一夕で身につくものではありません。

老朽化した道路や橋、トンネルなどが直されずそのままになってしまうということが、未来では起こるかもしれません。

インフラがヤバい

日本のトラックでの物流が危機に瀕しています。ドライバーの数が2015年の約76万人7000人に対し、2030年には32.3%も少ない約51万9000人になる見込みなのです。

宅配便は個人への配送が主流となるため、配送時に留守であったりして、企業にまとめて荷物を運ぶ場合に比べて手間暇がかかります。たくさんのドライバーが必要となるのに、ドライバーの数は減っているのです。

これによって物流の需給バランスが崩れ、2030年には10億トン以上の分の荷物が運べない見込みとなります。商品の3割もが計画どおりにユーザーの手元に届かないのでは、企業のダメージは大きいでしょう。

2021年時点で道路貨物運送業で働いていた人は、30〜40代が43.2%なのに比べ、20代は1割にも満たない9.0%。現在でも中高年が成り立たせているのです。

また鉄道を利用する人も将来減る見込みで、それにより赤字の路線も増えるでしょう。

15年後の15〜24歳は19.0%減少するとみられ、「20年後の勤労世代」も現在より2割近く減るという数字が出ているのです。つまり2040年には通学通勤定期券客が2割減ってしまいます。

さらにテレワークやオンライン会議が普及すれば、鉄道利用だけでなく、ホテルやタクシーなどの利用率も下がります。

大都市圏においても2040年には東京都の高齢者率が29.0%、大阪府では34.7%に達し、そもそも毎日鉄道を利用しなくていい層が3割もいるのです。

地方ではもうすでに影響が出始めており、ローカル線では大きく赤字が出ています。今までは大都市圏の通勤路線や新幹線が出す利益を内部補助としていましたが、それらの利益が減り、ローカル線に回すことができなくれなれば廃線も増えていくでしょう。

そして鉄道の問題は明日の水道、電気、ガスなどのインフラの姿でもあるのです。特に地方は利用者が減れば、その分値上げ率も高くなります。

人口密度が低い地域には、離島と同じく、サービスに上乗せ料金がかかる時代がくるかもしれません。

治安がヤバい

人口減少の影響は自衛官や警察官、海上保安官、消防士など、若い力を必要とする公務員へも及んでいます。

すでに自衛官は慢性的な人手不足となっており、女性自衛官の積極的な採用や、定年年齢の段階的な引き上げを行っています。警察官においても、現在の採用上限年齢は30代半ばの地域も多く、退職者の非常勤職員としての登用も増えています。

両者とも公務員制度の改革によって、段階的に定年年齢が引き上げられていますが、それによって組織の高齢化が進んでいるのです。

警視庁が職員の年齢構成の変化を推計しているが、60代前半の職員は2022年時点の2.9%から、2042年には14.8%を占めるまでになる。50〜65歳として計算し直すと、2022年は21.6%だが、2042年には40.6%に達する。

河合雅司著「未来の年表 業界大変化」

治安を守るのに若い力が必要な警察官の4割が50歳以上となってしまうのです。また治安が悪くなる上に、救急隊員も人手不足が予測されており、救急車が救急に来てくれなくなるかもしれません。

もはや自分の身は自分で守るしかなくなるのであり、日本の安全は大きく損なわれるでしょう。

地方がヤバい

また人気職である地方公務員でさえ、人口減少の影響は避けられません。小規模の市役所や町役場の場合、そこの出身であるとか、その土地に縁がある人が採用試験を受けるのが大半です。

しかし2021年は128の自治体で出生数が10人未満、しかもそのうち2つの自治体では出生数は0だったのです。若者がすべて地方公務員志望というわけではないので、採用は難しくなっていくでしょう。

2045年には地方公務員は2割不足するというデータもあり、窓口対応だけではなく、1人あたりの担当エリアが拡大し、迅速な対応ができなくなる恐れがあります。

また地方公務員の減少は教員不足でもあり、勤務地を分散させられないため、小中学校の統合も進みます。

「大人の事情」によって進む統合だが、影響を受ける子どもたちにとっての一番の課題は通学時間が長くなることだろう。2019〜2021年度では、統合によってスクールバス通学が156件から325件へと増加している。通学距離20キロ以上の人がいる学校は、小学校で8%、中学校では14%に及んでいる。自宅からここまで離れてしまうと、低学年の子どもたちにとっては精神的負担の大きさが懸念される。

河合雅司著「未来の年表 業界大変化」

学校の統合というのは簡単にはいきませんが、すべての学校を維持するのも困難です。

地方公務員の採用難も、公務員不足による行政サービスの劣化も、消滅へ向かっている地方自治体は避けられないのです。

少子化対策とは人口を増やすことではなく、人口が減った状態に対応していくこと

著者は人口の減少の減少に打ち克つことについてこのように書いています。

誤解がないように予め申し上げるが、「人口減少に打ち克つ」というのは、どこかの政治家が選挙公約で掲げるような「人口減少に歯止めをかける」という意味ではない。過去の出生数減の影響で、出産可能な年齢の女性はすでに減ってしまっており、今後もどんどん少なくなっていく。日本人口減少は数百年先まで止まらないだろう。この不都合な事実を直視するしかない。すなわち、ここで言う「人口減少に打ち克つ」とは、人口が減ることを前提として、それでも日本社会が豊かであり続けられるようにするための方策を見つけ出すことだ。

河合雅司著「未来の年表 業界大変化」

著者はその方策として、「戦略的に縮む」ことを推奨しています。

具体的に「残す事業」と「やめてしまう事業」に仕分けして、残した事業にブランド力をつけ、より多くの利益を得ます。

人材不足に対しては長時間の会議や朝礼をなくし、より専門性なスキルを高め、従業員1人あたりの労働生産性を高めます。

人口は分散させるのではなく10万人程度の都市をいくつか作って、中核的な企業や行政機関を雇用の中心として、海外マーケットと繋がっていく。

つまりマーケットも人材も人口も、分散させるのではなく集中させようということです。

もう人口を増やすのは無理ゲーだから、少ない人数で社会を回していこうぜ!というのは、大賛成です。実際そうするしかないですもんねえ。政府は頑なに目をそらしていますが。

著者の言うとおり社会をミニマム化できれば理想ですが、2040年までに実行するのは無理でしょう。だからこの本に書いてある人口減少による危機はほぼ起きるでしょうね。30年あっても、少子高齢化に何一つ対策できなかった国ですから。

過疎地に住んでいる独身は、将来ある程度都会に住むことを考えたほうがいいでしょう。仕事も医療も小売もインフラも安全も、地方に行き届かなくなる可能性があります。

職業も住む場所も、自分の意志で選ぶことができるというのが、独身の強みです。そのために都会に住んでも仕事が見つかるようなスキルを身につけておきましょう。

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