最近ネットでよく見る「弱男」という言葉に反応してしまうのは、私が間違いなく「弱女」(なんて読むんだろう。よわじょ?)だからでしょう。
弱男とは「弱者男性」の略で、独身・貧困・障害などの、社会的弱者となる要素を持っている男性のことです。特に未婚者は男性女性問わず、負け組だの、将来が悲惨など、散々な言われようです。
しかし結婚できるかどうかというのは、本人の努力でどうにかできることと、できないことがあります。思いのほか外的要因というのは大きいのです。
いや、そもそもみんなが結婚したいとは限らないし、しなくてはいけないわけでもないのではないか?
結婚に関するデータをもとに、なぜ現在こんなにも未婚者が増えてしまったのか、これから結婚はどうなっていくのかなどの、著者の意見をまとめた本を紹介します。
「結婚滅亡〜オワ婚時代のしあわせのカタチ〜」とは
2019年に出版された、独身研究家・荒川和久さんの著書。
衝撃的なタイトルですが、決して結婚を否定する本ではなく、独身が増えていくこれからの社会での結婚の位置づけや、独身はどう生きていくべきかなどについてを論じている本です。
日本の未婚化はなるべくしてなった
どう頑張っても結婚できない人が出てくる人口上、経済上、環境上の構造的な問題
未婚者が増えた要因をまとめるとざっくり次の3つです。
実際にはもっと大小様々な要素があるのですが、主なものはこの3つだと思います。
これって未婚者自身の努力ではどうしようもないですよね。特に人口に関しては。できる努力といえば自分のスペックを上げることぐらいしかありません。
しかしもともと低スペに生まれた人で、自分の生まれた環境や、自分の生まれ持った気質を乗り越えて、人口の上位何割かに入れる人がどれくらいいるでしょうか。
荒川氏もこのように書いています。
「結婚できないなんて気合が足りない」「その性根を変えるべきだ」などという自己責任論は無意味です。どんな社会環境だろうが恋愛をして結婚をする強者は存在するし、彼らは放っておいても勝手にやるでしょう。
問題なのは、7割の恋愛弱者の男女たち。彼らに個人の努力を押し付けても、無理なものは無理なんです。
荒川和久「結婚滅亡〜オワ婚時代のしあわせのカタチ〜」
そう、決して未婚者=努力不足ではないのです。
男はお金を取られることを嫌い、女は自由であることにメリットを感じる
荒川氏は著書の中で結婚を「経済生活」と表現しています。
結婚すれば結婚式・新婚旅行から始まり、車やマイホーム、子供の養育費など何百万何千万というお金が動きます。そして結婚を解消するときはするときでまた大金が動く。
中には結婚はそんなお金で動くものではなく、もっと崇高なものだと思う人もいるかもしれません。いや、結婚に愛がないとは言いませんよ。もちろん、あります。しかし紙切れ1枚出すことによって大金が動くのも事実。
家や保険や車のCMがすべて家族向けに作られているのは、子供が生まれてその子供がまた顧客になってくれるのを期待しているからです。
独身ばかりが増えては新しい顧客が増えず、新しい商品も売れません。だから結婚してくれる人が増えてくれないと困るのです。
しかし荒川氏は「結婚コスパ悪い説」を唱えており、世間の男性にもその考え方は広まりつつあるようです。
独身者による「結婚の利点」の調査によると、女性のほうが男性より圧倒的に「経済的な余裕」を挙げています。要は女性のほうが男性より、結婚に経済的なメリットを感じているということです。
そして結論こうなります。
さらに、身も蓋もないいい方をしてしまうと、結婚に際して、女は「金をよこせ」、男は「金はやらん」と思っているわけで、こんな人たち同士がマッチングされるわけがありません。
荒川和久「結婚滅亡〜オワ婚時代のしあわせのカタチ〜」
対して2015年の独身者による「独身の利点」においては、「行動や生き方が自由」が男性が69.7%、女性が75.5%となっています。意外にも女性のほうが、独身に自由というメリットを感じているのです。
男は自分のお金を守りたいと考え、女は自分の時間を守りたいと考える。男も女も結婚をコスパで考えていることには変わりないのです。
ソロ活の代頭
荒川氏は「経済的にも社会的にも精神的にも、自由と自立を求める」価値観をソロ度とし、のべ10万人以上を調査してきました。
その結果調査開始から5年間は、男女のソロ度の違いはあまり見られず、ソロ度の高い人は40〜45%の間で統一されています。
もともと一人が好きな人というのは一定数いるようです。もちろんソロ度が高くても結婚する人はいますし、逆もありえます。
現在の生涯未婚率はざっくり男性が30%、女性が20%ぐらい。離婚した人も含めれば独身の数は、さらに40%に近づきます。
もうソロ度の高い人は我慢をせず、独身を選ぶ時代になってきているのです。「一人が好きなことは変じゃない」という空気になり、みんながそれを隠さなくなってきています。
となると、1920年から1980年代まで、95%が50歳までに結婚していた時代が異常で、むしろ今が自然なのではないでしょうか。
結局結婚は滅亡するのか?
荒川氏は「従来の結婚は無くならないだろうけど、減少はしていくし、結婚の形も家族の形も変わっていく」と書いています。私も同意です。
個人的に今後結婚は永遠の愛を誓うものではなく、もっと流動的なものになっていくのではないかと思います。
子育てが終了したら、結婚生活を卒業して、お互いがそれぞれの道を歩くのが普通になったりとか。むしろそうするのを前提として結婚するようになるかもしれません。
人々の結婚観が今後どのように変化していくにしろ、独身も既婚者も一人で生きていく力が必要になってきます。
独身は言わずもがなですが、既婚者もいつか一人になる覚悟をしておかなくてはいけません。離婚や死別、子供が遠くに引っ越す可能性だってあります。既婚者の孤独死も実はとても多いのです。
頼れる人が家族だけという状況にしてはいけないし、「自分は結婚している」ということにあぐらをかいてはいけません。
荒川氏はこれからはコミュニティに属するのではなく、コミュニティに接続することが大切だと書いています。どんどん個人化していく社会では、個人と個人がつながることが大切だということです。
会社のように名刺や立場でつながるのではなく、あくまで個人としてつながる。
固定した関係ではなく、本が好きな人、ライブが好きな人、お酒が好きな人というように、その時その時で必要な人とつながるんです。
そんな浅い関係では、いざというとき助け合うことはできないだろうと言う人もいるでしょう。
分かりませんよ。案外ほどほどに距離感のある他人のほうが適切なアドバイスをくれたり、思わぬ助けを貸してくれるかもしれません。家族だからといって、助けてくれるとも限りませんしね。
とにかく大切なのは、家族以外の人とつながること。これが一人で生きる力です。これ、女性はわりとできるらしいですけど、男性はできない人も多いらしいです。
こういう外で人とつながる力をつけつつ、やはり自分のことは自分でなんとかできる力もつけておいたほうがいいですよね。
基本的な家事だったり、自分で介護の施設の目星をつけておいたりとか。家事なんて一朝一夕でできるようにならないから、世の旦那さんたちは配偶者がいなくなって急に慌てるし、絶望するんです。
まあ、男性がみんな家事ができるようになったら、ますます結婚のメリットがなくなって、結婚する人が減りそうですが。
でもそれでいいんじゃないでしょうか。本当なら自分のことが自分でできる人が結婚する資格があると思うし、結婚なんて本当にしたい人だけがするべきです。
これから結婚する人の数、割合が減っていくことによって、結婚の価値が上がっていくのか、または逆に下がってしまうのか。私はとても興味があるのです。